2019年01月21日

自筆証書遺言

ここのところ、日常生活のグダグダした記事ばかりで、
めっきり皆様への情報提供が
少なくなってしまっておりました。

反省しております。

さて、今月13日から、自筆証書遺言が書きやすくなりましたので、
情報提供です。


これまで、自筆証書遺言は、その全文を自筆で書かなければ
ならないと定められていました(民法968条)。
その為に、不動産の所在や銀行口座など、
細々した情報を手書きしなければならないという苦労がありました。
しかし、不動産や銀行口座などの財産に関する目録については、
自筆で書かなくても、パソコンで作成したり、
通帳のコピーを添付するなどの方法でもよくなりました!
(但し、各ページに署名と押印が必要です。
 また、今月12日以前に作成していた自筆証書遺言には
 適用がありませんので、ご注意を。)

これで、自筆証書遺言の作成も、
少しは楽にできるようになるのではないかと思います。


今回の相続法の改正には、
これ以外にもたくさんの改正がなされています。
個人的には、配偶者居住権の創設は
いろいろな場面で使えるんじゃないかと思っています。
自筆証書遺言に関するものでも、
法務局で預かってもらえるようになるなどの改正があります。

しかし、実際に使えるようになったのは、
今回紹介した自筆証書遺言の財産目録の点だけ。
それ以外の改正は、早いものでも、今年の7月以降からです。
(自筆証書遺言が法務局で預かってもらえるようになるのは、
 来年の7月10日からで、
 まだ手続きの詳細なども決まっていません。)


一度、相続法の改正についても
全体を通す形で説明をしたいと思いますが、
それはまた次の機会ということで。

興味がおありの方がいらっしゃいましたら、
遠慮なくお問い合わせください。
いつでも、ご説明させて頂きますよ!



posted by hora at 17:12| Comment(0) | 情報

2017年01月31日

節税対策のための養子縁組

私が注目していた事件について、
今日、最高裁判所が判断を下しました。

その内容というのは、
「 専ら相続税の節税のために
 養子縁組をする場合であっても、
 直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう
 『当事者間に縁組をする意思がないとき』に
 当たるとすることはできない」
というものです(最高裁HPより)。

資産家の方の中には、お孫さんを養子にすることで
節税を図られる方がいらっしゃいます。

一番分かりやすいのは基礎控除。
遺産の内、「3000万円+(法定相続人の数)×600万円」は
相続税がかかりません。
法定相続人が2名なら4200万円、
法定相続人が3名なら4800万円、
法定相続人が10名なら9000万円が
相続税の対象から外れる訳です。

「養子縁組をすることで法定相続人の数を増やせば
節税ができる!」ということになります。

「それじゃ、俺は養子を100人とってやるぞ!」という
猛者がいるかもしれませんが、
実子がいる場合、基礎控除の計算でカウントされるのは
養子1人だけと決まっていますので、ご注意を(笑)
(実子がいない場合でも2名までです。)

また、この他にも、本来であれば、
父→子の相続時(父の死亡時)に1回、
子→孫の相続時(子の死亡時)にもう1回と
合計2回分の相続税を支払わなければなりませんが、
孫と養子縁組しておけば、
1度目の相続税計算で基礎控除を増やして節税し、
その上、1度の相続で孫まで財産が移転しているので、
2度目の相続税課税を免れることもできます。


しかし、孫と養子縁組するケースはトラブルも多いのです。
例えば、長男,次男,三男の子3名で相続すべきところ、
長男の子(孫)を養子縁組するとどうなるでしょうか。

法定相続人が4名になったので基礎控除が増えたね、
というところまではよいのですが、
長男と孫(長男の子)という長男一家が
遺産の半分(法定相続人4名のうち2名となる)を
持って行ってしまうことになるため、
次男と三男の不満が高まるのです。
(長男一家で財産をたくさん受け取るために、
 親には節税対策と説明をして、
 自分の子(孫)を養子にしようとする長男がいることも
 事実なのです。)


と、前置きが長くなりましたが、
上記の裁判は、まさに今お話した子3名のケースで、
長男以外の2人の姉妹が、
「節税目的のみでなされた養子縁組は、
本当に親子関係を築こうとしたものではないから、
養子縁組としては無効なのではないか」
と訴えていたものです。

第1審の東京家裁はこれを有効としたものの、
第2審の東京高裁がこれを無効としていました。

実は、結婚の場面においては、
社会通念上夫婦と認められるような関係を
構築する意思がない場合には、
「当事者間に婚姻をする意思がない」(民法741@)として
結婚は無効であるとされています(実質的意思説)。
養子縁組もこれと並行に考えられるはずで、、、
(実際に東京高裁はそのように考えたのです。)

最高裁はどのように判断するのか・・・!?
と注目が集まっていた訳です。
(他方で、離婚は、離婚届を出す形式的な意思で足りると
 されています。)

最高裁は、
「相続税の節税のために養子縁組をすることは,
(このような)節税効果を発生させることを動機として
 養子縁組をするものにほかならず,
 相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,
 併存し得るものである。」
とした上で、
「(本件では)本件養子縁組について,
 縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はな」い
として有効と判断しました。

つまり、
 親子関係を築くつもりがない養子縁組は無効だけれども、
 節税目的だったから親子関係を築くつもりはなかった
 とはいえない
と言ったのです。


今回の最高裁判例によって、養子縁組が節税のために
利用できることは明らかになりましたが、
上記のようなトラブルのおそれもありますので、
くれぐれも慎重に手続きをおすすめください。

ご検討の方、ご心配がおありの方、
いつでもご相談ください。



posted by hora at 17:28| Comment(0) | 情報

2016年12月28日

相続における預貯金の取扱い

最高裁大法廷が、平成28年12月19日、
亡くなった人の預貯金を
親族がどのように分け合うかについて、
「預貯金は法定相続の割合で機械的に分配されず、
 話し合いなどで取り分を決められる
『遺産分割』の対象となる」
との判断を示しました。

これはこれまでの判断を変更するものです。
一般人の感覚からすれば当然のことなのですが、
最高裁はこれまでこのような考え方には
立ってこなかったのです。

これまでも相続人全員が合意すれば
預貯金も遺産分割の対象として自由に分けられたものの、
合意ができない場合には、
民法の法定相続分に従って分割されてきました。
”金銭債権は、相続の開始と同時に、
法定相続割合で、当然に分割承継される”
と考えられていたのです。

例えば、こんなケースを考えてみてください。

父が預金2000万円を残して死亡。
相続人は長男と次男の2人。
長男は、父親から生前に、生活の助けとして
1000万円の贈与を受けていた。

次男は、
「兄貴は先に1000万円もらってるんだから、
あと500万円で我慢しろよ。
僕が1500万受け取れば平等だろ!」
と言います。
なかなかごもっともな意見。
しかし、長男は、
「預金は法定相続分どおりに受け取れるんだ。
 だから俺は1000万円もらうぞ!」
と言って譲りません。

こんな場合、これまでの最高裁の考え方では、
長男の言い分が通っていたのです。
しかし、今後は、長男の同意がなくても、
預金が遺産分割の対象となりますので、
預金2000万円と生前贈与1000万円の合計3000万円が
遺産の総額となり、1500万円ずつの分割になる、
つまり、次男の言い分が通るようになります。

これまで、金融機関に法定相続分の預金払戻を求めるような
訴訟をが提起されることも多かったのですが、
そのような訴訟も激減することでしょう。


自分が亡くなったあとに家族が争うなどというのは、
絶対に避けたいところ。
また、余計な税金を支払うのも避けたいですね。
どのような対策を行い、
誰にどのような財産を相続させるのが一番良いのか、
遺された家族がもめないためにも、
ぜひ、一度考えてみてください。

遺言の作成や相続税の計算など、
いつでもご協力させて頂きます。
お気軽にご相談ください。


posted by hora at 12:33| Comment(0) | 情報